第246章 愛 <完結>
お前といると未知のものに出会う。
仲間、言葉、色、歌、花、景色、紅茶、菓子……そして、命を尊ぶその志……
それを知る度に、戸惑いながらも……俺の世界は、彩を増していく。
俺と言う人間に、お前が色を乗せていく。
――――他の誰にもできない、この世界でただ一人、お前だけだ。
だから好きだとか、抱きたいだとか、そんな次元のもんじゃねぇんだ。
到底言葉にできない程のこの想いを唯一表わせるとしたら、一番近しい言葉が愛だと俺は理解している。
もしこれが愛じゃないなら、俺はこの世に愛なんてものは存在しないと言い切ってやる。
狼狽えるナナを観察していると、困り眉のままナナは俺の頬を軽くつねる。
自然と距離が縮まって、その唇を重ねる。
そしてまるで測ったかのように、その言葉もまた、綺麗に重なった。
『愛してる。』
……この残酷な世界を生きていくことができるのは、お前を……生きる意味を、見つけたからだ。
あの日空から降ってきた小さなナナとの出会いをなぞってふと見上げた空は高く蒼く、その空を風が通り過ぎながら……その風を掴んだ鳥が高みへと羽ばたいていく。
その更に向こうにあるのは、地下街から焦がれた太陽。
かつて目が眩むほど眩しく見えたそれが、今はとても柔らかく俺達を包む光に見える。
その光に照らされた木々は力強く命を輝かせて、花が色とりどりに咲き誇り香り立つ。
静かに波を寄せる深く美しい濃紺の海と、それら全てを包み込む蒼く突き抜けたような空には七色の虹がかかっている。
俺達は今、同じ景色を肩を並べて見つめている。
―――――お前と生きる世界は……
こんなにも美しい。
―――――お前にはどう見える?
―――――なぁ、ナナ。
片翼のきみと ~Fin~