第246章 愛 <完結>
――――そうやってこれからもずっと……幸せそうに笑ってろ。それだけで俺は、なんだってできる。なんだってなれるんだ。
お前が愛する世界を守るためなら人類最強の兵士に。
お前が恐怖に震えるなら、その恐怖を祓う魔法使いに。
お前が深い眠りにつくなら、お前を呼び覚ます王子に。
お前が愛する娘と笑ってられるように、お前達を守るナイトに。
―――待て待て、俺に何役やらせる気だ。
無茶ぶりも半端ねぇうえに、ガラじゃねぇにもほどがある。
だがお前は今も時折俺をぎゅっと抱いて、まるで少女のように『私だけのヒーロー』だと呟く。
結局のところ、それが全てなのだろう。
お前のその言葉が、未だに馬鹿みてぇに嬉しいと思う俺もまた―――――、どうかしてる。
「―――――あんたには見えてたのか?今の俺達の姿が。なぁ、じじぃ。」
口をついて出た言葉を、あんたはこの空の果てで聞いているのか。悔しいが、あんたの言う通りだった。
18年前時計塔から降ってきた少女エイルは、ナナは……俺の最愛の存在になった。
その最愛の存在が、柔らかな笑顔で俺を見つめている。
その姿が美しくて、俺のものだと確かめたくて、抱いていたエイルを降ろした。