第246章 愛 <完結>
頭を撫でるとエイルは嬉しそうに笑う。
彼女を観察していると、とても可愛い。
時折、自分の襟口から手を入れてごそごそとしたと思うと、胸に光る片翼のネックレスを誇らしそうにつまんでそれに目を輝かせてから、いそいそと大事そうに服の中にしまう。
「おとうさんもここにいる!」
「うん、そうだよ。――――今もずっと……、きっと側で、あなたのことを守ってくれてる。」
エイルはもちろんエルヴィンの顔を一度も見たことがない。
パラディ島に帰ったら、マリアさんに会いに行こう。
あなたのおばあちゃんだって、ちゃんとエイルに会わせてあげたい。マリアさんに、エルヴィンにそっくりなエイルを、抱かせてあげたい。
エイルは服の上から片翼のネックレスを確かめるように大事そうにさすって、そしてまた図鑑を喜々としてめくっていく。
私は空を仰いでから、車椅子から甲板の手すりに掴まって自らの足で立ってみる。
まだぎこちないけれど、リハビリすれば……きっとまた、歩けるようになる。
車椅子に座っていたときよりも高い目線で、海とその先の大陸にかかる虹を眺める。
するといきなり、ふわりと身体が浮いた。
「えっ。」
「――――何やってる。危ねぇだろ。」
「何って……リハビリを兼ねて。」
「船の上でやることじゃねぇ。座ってろ。」
「………はい……。」
私を不機嫌な様子で抱き上げたのは―――――
今も昔も、過保護で心配性で……不器用で……私を誰よりも愛してくれる、彼だ。