第246章 愛 <完結>
―――――遠ざかっていくのは、マーレ大陸。
私は車椅子に座ったまま、船の甲板から海の向こうを眺めた。
「ねぇおかあさん!!みて!!カモメ!!!」
私の側で空を横切る鳥を指さして笑うのは、最愛の娘だ。
「ふふ、本当だ。ねぇエイル……、見て、虹……?」
「!!!ほんとうだ!!!」
「虹って、どうやってできるのかな?」
「えっとね、まって!!にじはね……!」
こっちに来てリヴァイさんが買ってくれたという分厚い図鑑を嬉しそうに広げて、好奇心に溢れた目を輝かせている。
―――あぁきっと、幼い頃のあなたはこんな目をしていたんだね。
――――ねぇエルヴィン。
変化こそ、唯一の永遠だって……本当にそうだと思う。
何もかも変わった。
巨人の力が消え去った世界は……ますます兵器開発を進め、技術が発展して………そしてまた、いずれどこかで争いが始まる。そしてどこかでこんな風に誰かの想いを引き継いだ子が生まれて……私たちは歳をとっていく。
変わらないものなんてなくて……、変化するから、輪廻して、永遠に繋がっていく。
その中で誰かが誰かを大切に想うことが受け継がれていく……それを例えば人は愛と……呼ぶのかな。
きっと……それだけじゃ、ないけれど。
「――――あなたへの愛は、今もここに輝いていてるよ。」
隣で喜々として図鑑を眺める、エイルの髪をふわりと撫でる。
「??おかあさん??」
「…………なんでもないの。愛してる。大好きだよ、エイル。」
私がそう伝えると、エイルは驚いた顔をしてすぐに、弾けるように笑った。
「わたしも!!」