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【進撃の巨人】片翼のきみと

第245章 契








「――――……!!」







数秒……呼吸すら止まりそうなほど私を抱き締めて、エルヴィンは………私の両肩を掴んで、体を引き離した。

俯いている表情は酷く苦しそうだ。

でも……顔を上げた時の彼の表情は、柔く強く精悍で……いつもの……私の焦がれた蒼い瞳が真っすぐに私を映した。






「行っておいで。ナナ。」



「………エルヴィ………。」






驚いて、私は目を丸くした。



――――――手段を厭わない人だった。

自分の欲しいものを手に入れるためなら、力づくでも事を運ぶ。でもその強さすら、眩しくて……大好きで。



そんな欲望に忠実な彼が……もう一人の彼の心を救いに、私を行かせる決意をした。

――――それが私は嬉しかった。

私を尊重してくれたことが、じゃない。

エルヴィンが唯一無二の戦友の心を守るために下した決断が。



だってそれは、あの頃の2人の…強くて美しい絆がまだ生きていることを物語っていたから。







「――――ありがとう……っ………。」





「…………。」







私が涙ながらにエルヴィンの頬に触れると、エルヴィンはまるでらしくなく眉を下げて、寂しそうな表情を全く、隠さなかった。

私は溢れる愛しさをなんとか伝えたくて、その腕に収まって、その悲し気な蒼を見上げて心から最上級の愛の言葉を贈る。

私とエルヴィンだけが知る、愛の言葉を。









「――――I love you forever, Erwin.」






「――――Not enough.」










拗ねるように少し唇を尖らせてエルヴィンが言ったその返答にまた目を丸くする。

けれどどうにもそんな彼が可愛くて、唇をかすめるようにキスをする。








「………欲張り。」






「際限なく欲しいと思うのは、君の心だけだ。」









私の耳元でまた甘く言葉を囁いて、私を腕から解放した。

あんなにも会いたいと願ったエルヴィンに、私は自分から背を向けた。





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