第245章 契
「―――嫌だ。嫌だ、嫌だ……ナナ。俺を置いて行くな。行かせない。本当は……リヴァイにだって返したくなかった……!何もかもを投げ出して、君だけを――――……!」
「―――エルヴィン……。」
初めて見るエルヴィンの我儘と縋るような仕草に戸惑いながら彼の髪を撫でて抱き締めると、小さくまた、声が聞こえる。
”――――………かみさま………っ………”
遠くで聞こえる小さな声。
エイルとは違う声。
泣いてる。
とてもとても苦しそうに泣いている。あぁそうだ。
この声は知ってる。
私の愛した、もう一人の――――……
「リヴァイさんが、泣いてる……!私、行かなきゃいけない……!」
「――――………。」
「―――……行かせて………。」
”―――――ナナ…………ッ…………俺を――――……助けてくれ…………。”
その悲痛な声が聞こえた時、エルヴィンも目を開いて制止した。もしかしたら……エルヴィンにも、聞こえたのかもしれない。
戦い抜いて、多くの仲間の死を見届けてきた人類最強の兵士の……心からの、悲痛な叫びを。
「―――ッエルヴィン、私―――――!」
強く抱き止められた腕を振り払うように体を捩った瞬間、食らいつくように唇を塞がれる。
「――――んぅっ……!」
食べられる。
そんな風に思うくらいの容赦ない口付けを受けながらも、身を捩る。放さないつもりだ。このまま、ここに繋ぎ止められる……、そう、思った次の瞬間には唇は解放され、息が止まるほど強く抱かれた。