第245章 契
君たち、っていうのは……私とリヴァイさんの幸せを願ってるってことだと、思ってた。
――――でも、違った。
「――――エルヴィンはいつまでも……リヴァイさんのことが、怖いんだ。――――私を奪われてしまうことが。だからリヴァイさんを“守る”という立場に縛りたかったの?」
核心をつくと、エルヴィンは目を見開いてから……顔を上げた。その表情は……なんとか口角を上げているけれど、寂しさと悔しさと……僅かな後悔が入り混じった顔だった。
きっとエルヴィンは全てわかっていたんだ。
自分が生きて帰れないかもしれないこと、リヴァイさんなら生きて帰れる可能性があること、そして……私の中に、忘れ形見を残したことも。
あの夢の中の一言は……調査兵団団長のエルヴィン・スミスじゃなく……子供じみた嫉妬と意地の悪さを含んだ本当の……初めて愛した女性を一生涯自分に繋ぎ止めることを心のどこかで諦められきれない、ありのままのエルヴィンの言葉―――だったのだろうと思う。
「――――それなのにやっぱり私の元へリヴァイさんを返して……リヴァイさんの想いに応えることを許すような手紙を残してくれたことに……あなたの愛情を、痛いほど、苦しいほど、感じる。」
「――――……。」
「エイルはエルヴィンに、そっくりだよ。」
「――――エイル。いい名だな。」
「エイルの中にあなたを感じずにはいられないの。離れても、形を変えても、あなたのことを忘れることなんてない。ずっと愛してるよ、エルヴィン……ずっと。」
再びの別れに似た愛情を込めた言葉を贈ると、エルヴィンは私の腰を引き寄せて我儘を言うようにまた胸に顔を埋めて小さく呟いた。