第245章 契
「………あなたが残したラブレターを……お守りみたいに、くしゃくしゃになるほど……何度も読み返したよ。」
子供をあやすように、エルヴィンの目の前にしゃがんで目線を合わせて話す。
「Nothing is permanent except change.変化こそが唯一の永遠……それとI love you, forever……これって、矛盾してるよね。」
「――――そうだな。」
「何度も何度も考えたの。どう理解するのが正しいのかって。」
「それを考えている間は、俺のことを想っていただろう?」
「――――まんまとね。」
うふふ、と笑ってエルヴィンをまたふわりと胸に抱いて、抱きしめる。
「考えて、考えて、考えて……私は、エルヴィンへの永遠の想いを胸に遺したまま、変化することを選んだ。だって……だからあなたは最も信頼した彼を、私の元に返したでしょう……?」
「――――………。」
エルヴィンは私に目を合わさないまま、ぴた、と制止した。
……―――私も、思い出した。
リヴァイさんの腕に戻った日に見た、クローバーの丘の夢。
エルヴィンが言った最後の一言は確かに発されたはずだったのに……突風にかき消されたように、眠りから覚めた私にはすっぽりと抜け落ちたように記憶から無くなっていた。
けれど今、はっきりと思い出した。
「あなたは本当に……狡くて、怖いひと。」
その言葉に、エルヴィンは私を見上げてニヤリと小さく、口元に笑みを零した。でもどこか、その目は……切なげだった。
あの日……夢で会ったエルヴィンの唇が動いて紡いだその最後の言葉を思い返す。
“俺は君たちの幸せを心から願ってる。だから――――……”
その、続きを。
“だから――――――リヴァイを残した。君たちを、守らせるために。”