第245章 契
エルヴィンは右手でそっと私の頬を撫でて、そのまま髪を少し梳いた。その違和感を確かめるようにエルヴィンの右腕に目をやると、失ったはずの腕が……ある。
「右腕がある!」
「ああ、さすがにここではありたい姿であれるみたいだ。」
「………こうしてこんなに強く抱かれるのが、久しぶり。」
「痛いか?」
「ううん、すごく……安心する。」
「そうか。」
「エルヴィン……。」
「ん?」
名前を呼んだら、答えてくれて……私を見つめて、愛おしそうに触れてくれる。それだけで、涙が止まらない。
だってずっと……あのラブレターを胸に抱いて呼び続けてた。この世とあの世を心の声は繋いでくれなくて……でも諦められなくて、ずっと呼び続けてた。
「エルヴィン、エルヴィン……。」
「ナナ。――――ナナ、ナナ………。」
呼んだ分だけ……それ以上に返してくれる。
耳に、頬にキスをしながらその想いを刻むように、私の中に浸透させてくれる。エルヴィンの首に両腕をまわして、エルヴィンは私の腰から背中に両腕をまわしてお互いに強く強く抱き合う。
自然と触れた唇は温かくて、吐息を重ね合いながら、これまでの時間を埋めるようにキスをした。
キスの合間に、額を合わせたままエルヴィンが私の視線をその蒼い瞳で絡めとって、呟いた。
「――――I love you, Nana.」
愛の言葉を受け取って、私はいつものように可愛くない返事をする。
「――――I know.」
そして2人ふふっと笑い合うと、また強く強く、お互いの体温や香りを思い出すように、抱き締め合った。