第244章 眠り姫
「――――ナナ、お前は……どうしたい?」
泣きながらナナの手に縋るエイルの肩を抱いて、ナナを見下ろして問う。
生きた屍のようにベッドに一生繋がれるのを……お前はきっと嫌がるだろう?
いつか話したとおり――――……お前の鼓動がだんだんと弱くなっていって……最後の鼓動を鳴らすその時も、俺が抱いていてやる。
――――そう、俺もその覚悟をして、ここに来た。
ナナを失うことは怖い。
ありえねぇ。
ナナが死ぬ、なんて。
本当は……目を開かなくても、そこにいてくれたら……俺は毎日体を拭いて……その美しい髪を梳いて、語りかけて、抱きしめてキスをする。
俺の生きる意味をそこに見出せる。
でも、それはお前の望みとは異なるんだということも、知ってる。
――――病を押してまで調査兵団に帰ってきたお前が、そんな生かされ方を望むはずがない。
――――それに、エイルが……この状態のナナを置いて、故郷に帰れるはずがない。
――――だから俺は……
エイルの声ですらナナが目覚めないのなら……
万事尽きたということなら……
今度こそ終わらせようと思う。
ナナの命を、この手で。