第243章 少女
「――――あぁそうだ。お前を守り、育て……導く。……お前は俺の、もう一つの生きる意味だ。」
地下街にいた頃、エイルを守ることに……生きる意味を、生まれて初めて見出した。
そして地上に出てありとあらゆるものを……仲間の命も失って……。
それでもまた、この燦々と太陽が降り注ぐ場所で、俺はまた守るべき存在を腕に抱き締めた。
その小さな体を抱き締める腕が、震える。
「――――っ………!」
エイルの小さな肩に顔を埋めて涙を流す俺を心配したのか、エイルは小さな手で俺の背中をさすった。
「りばい、さん??」
「――――悪い……。」
エイルの肩を両手で優しく掴んで身体を放す。
初めて近くで覗いたその瞳は、吸い込まれそうなナナのその目を思わせる。エイルはハッとした顔をして、ポケットを慌ててごそごそと探った。そして小さな手に白い布を握って……下がりきった眉のまま、俺の涙をそっと拭った。
「……いたい?」
――――大の大人がみっともなく泣くから……どこか痛いのかと思ったのだろう。
「――――そう、だな……。あちこち、痛ぇな……。」
俺の言葉に、見るからにあわあわと動揺して……エイルはきょろきょろとあたりを見回しては、うーん、と目線を上に上げて考えたのち、小さな手で俺の頬を包んで、ナナと同じ……優しい目をして言った。
「ないていいのよ!」
――――ああ、この小さな……俺の守るべき存在の中に色濃く受け継がれているのは……どんな時も、誰にだって寄り添い、受け入れようと……癒そうと向き合ったナナの姿勢だ。
俺が泣ける場所は……
俺の涙を拭えるのは……
いつだってお前しかいないんだ。