第243章 少女
「――――エイル。」
少女は驚いた顔で、大きな目をこちらに向けた。
「………だれ………?」
「――――リヴァイ。」
「!!」
エイルはナナと同じ……銀糸の睫毛に縁取られた目をさらに大きく見開いた。
―――――その目は、まるであの日ナナと見た水平線のようだ。
蒼い空と深い海の紺色が混ざり合うようなその目は知的で生意気そうで……、ナナの髪よりも黄味の強い、ゆるやかなくせのある長い金髪を風が揺らして……見事なまでに美しい。
―――――そこに、色濃くナナの面影がある。
そして――――エルヴィンの面影も。
エイルの髪が風で揺れるたびにこれまでのことが……ナナの、エルヴィンの……そしてこの繋がれた命が生きる未来を守るために心臓を捧げた数多くの仲間の顔が一気に蘇って――――……俺の頬を、一筋の滴が濡らした。
「…………!」
エイルは俺を見つめて、僅かに動揺した顔をしてから、力いっぱい、駆け寄って来た。
両手を広げて――――……
まるで待っていたと、こうなることが分かっていたとでも言うように。
俺は片膝をついてエイルに目線を合わせる。
――――すると迷うことなくその小さな柔らかな手は、俺の首にぎゅっとまわされて――――……
力の限り、俺を捕まえた。
「――――りばいさん。おかあさんと、わたしの……ないと?」
その小さな体を抱き締めて――――……
そこにも、俺はナナを見つけた。
たまらないほどの笑顔で……この柔らかな髪を撫でたのか?
こうして抱きしめて、愛してると伝えたのか?
――――……こんな小さなエイルが……当たり前に俺の名を知っていて……、会ったこともない俺の腕に迷わず飛び込んでくるほど、お前は俺の事を話して……聞かせたのか。
――――いつか必ず迎えにくると……そう、信じて。