第243章 少女
奴らが帰って、ようやくまた静寂を手に入れて長いため息をついた。
――――うるせぇのはごめんだ。
思い出すから。
――――兵舎に仲間が……エルヴィンが、ハンジが……ナナが、ミケがいたあの頃を。
なんだアーチの野郎は、俺に嫌がらせをしにあいつらを連れてきやがったのか?と腹立たしさを覚えたが……また数日後に現れたアーチの言葉で、俺はその本意を理解した。
『――――あんたに、笑って欲しいよ。』
『幸せになって欲しい。そう、願ってんだよ、みんな……。』
アーチが涙ながらに言ったその言葉と、ジルの言葉が重なる。
これ以上辛い想いをするなら……これ以上身が引き裂かれるような苦しみを味わうのなら……もう逃げてしまえばいい。
そう、思った。
――――でも、本当にそれでいいのか?
ナナは何を望む?
俺は何を望む?
この部屋でナナの笑顔を思い出す度に……苦しくて、切なくて……心臓がひきつった。
だが、ナナが俺に齎すものなら。
……どんなにもがき苦しむほど痛くても、身を裂かれても、辛くても――――受け取ろう。
俺の中にちゃんとナナが生きた証を残す。
そう、決めた。
――――すべてを終わりにするには……まだ早いのかもしれない。