第243章 少女
それから何度か……眩しすぎる朝日に嫌気がさす、そんな朝を迎えたある日、アーチがついに部屋に足を踏み入れた。
そして半ば無理矢理連れていかれた小さな飯屋で、久しぶりにまともな飯を食って……他愛もない話をした。
アーチは戦場にいる時、尖った黒い殺気を放つ奴だった。
的確に相手を殺す術としては……サッシュよりも優れていたと思う。だが今のアーチにはそんな鋭利な気配はどこにもなく、ただの普通の青年に見える。普通に生きていけるのならそれに越したことはねぇと思うが……アーチが時折窓から空を見上げる横顔がどこか寂しそうで、居場所を探しているように見えて……
アーチが気まぐれで言った、明日も俺の部屋に紅茶を淹れにくる、という提案をなんとなく、承諾してしまった。
そしてそれを翌朝早々に後悔することになる。
明らかに複数人の……うるせぇ声が部屋の外からも丸聞こえで奴らは来やがった。
アルミンにミカサ、ジャンにコニー、そしてこんなことになった張本人、アーチだ。
奴らは人の部屋に上がり込んで好き勝手した挙句、『兵長に会えてよかった』と……安堵するような笑みを見せた。
アルミンが言った……『兵長もマーレに来てはどうか』その提案にわずかに揺らいだ……が、まだ俺は踏ん切りをつけることができず、当たりここに残ることを選んだ。