第20章 始動
怒りの感情を露わにしながら、手早く服を纏い、アウラは俺を睨んで言った。
「――――――後悔、させてやるから。」
その目の奥に、嫌な歪みを見た。
俺はアウラが開けようとしたドアに手をついて、アウラを囲い込む。
「どういう意味だ?」
「………どういう、意味かしらね。」
「言え。なにか企んでるだろう。」
「………あの子も、私と同じ目に遭えばいい………!あの子が酷い男に弄ばれたら、ちょっとは私にしたことに罪悪感を感じてくれる?」
「――――――アウラ。」
アウラの頬に手を寄せる。
そのままその細い首を掴み、力を込める。
「―――――――ナナに何かしやがったら―――――――――殺すぞ?」
「――――っか…………はっ………!………いい……わよ、殺しても………っ……!そしたら、あの綺麗な子はっ………あんたを捨てるわね、きっと…………っ………ぅ……ぐっ………ざまぁ、みろ………っ……!」
「……………。」
俺は黙って力を込める。
頭の芯が、冷え切った感覚だ。俺の中はどこまでも冷たい。あいつがいないと俺はすぐに冷え切って―――――――やがて周りに牙を剥く。
「………ぁ………ふっ………イカれてる……っ………あんた、も、………あたしも……っ…!」
アウラの口角がわずかにあがる、嫌な笑みだ。
意識が飛ぶ寸前でその首を離す。大きくせき込み、ふらつきながらも俺の部屋を出ていった。
「―――――――ちっ………。」
ナナに何か嫌な影が忍び寄る。気を付けておかねぇと―――――――
いつだったか、サッシュに偉そうに能書きを垂れたが、ざまぁねぇな。
俺の過去の振る舞いが、またナナを危険に晒す。
守りたいと思っているのに、傷付ける。
だが、一度あいつを手に入れた以上、もう離れる選択肢などない。
他の誰をどれだけ傷付けようとも、触れさせねぇ、誰にも。