第243章 少女
地下街は俺の庭のようなもんだが……昔ほど体はうまく動かない。同じくもともと地下街を庭にしていた、健康体のそいつにいとも簡単に追いつかれた。
腕を掴まれ、めんどくせぇと目線を向ける。
「なんだ、ジル。」
「なんだ、じゃねぇよ……お前、なんて顔してんだよ……。」
「―――あいにく、いろいろと不便な体になってな。」
右目を押さえて自嘲するように呟くと、ジルはカッとなったように叫んだが……その顔は、なぜか俺よりも泣きそうな顔をしていた。
「違ぇよ!!お前のその……表情だよ……!!」
「――――………。」
「――――ナナ……、なぁ、ナナはどうしたんだよ……?」
「――――………。」
俺は言葉少なく、事の顛末を少しだけ……ジルに話した。ジルは俺の話を聞いて、泣いた。
「……なぜお前が泣く。」
「……お前の、不甲斐なさに呆れてんだ……!!」
「――――黙れ。お前に何がわかる。お前にはわからない。俺のことも……ナナのことも。」
「わかんねぇよ!!でもな!!俺の憧れたお前は……っ……、こんなところに引っ込んでじめじめと蹲ってるような男じゃねぇんだよ……!!」
「――――理想を押し付けるな。迷惑だ。」
ジルの言葉を冷たく否定すると、ジルは俺の胸ぐらをつかんで激しい剣幕で俺を一喝した。
「……いいや、何度でも言ってやる。お前がいるべきはここじゃない!!いくら辛くてもな……!!前向いてろよ!!ナナが惚れた男は、こんな弱虫じゃねぇだろうが!!」
「――――……。」
「……待ってるだろ、きっと……お前を……。」
ジルはうなだれて、また……泣いた。
心根の優しい奴だ。
だがなぜ……俺のためにそんなに一生懸命になれるのか。
アーチもそうだ。
俺はそれを、聞いてみたかった。