第242章 慟哭
呆然とした。
ナナさんが怪我人を診てくれて、レベリオ区の住民もマーレ兵もおおよそが機関車で街に戻った。
マーレ兵のミュラー長官とこれからのパラディ島の在り方の糸口を見いだせそうな話をして、ナナさんや兵長、アーチさんと同じ列車に乗った。リヴァイ兵長とナナさんの二人を邪魔しちゃ悪いから……アーチさんと一緒に、隣の車両に乗っていた。
もうすぐ街に着くというその頃……なにやら隣の車両が、がやがやと人だかりができている。
「何か……あったんですかね……?」
「―――どうだろうな……、エルディア人とマーレ人の喧嘩じゃなきゃいいけど。」
僕とアーチさんは人込みをかき分けて、車両を移った。兵長とナナさんがいらぬ事に巻き込まれてはいけないと思ったからだ。そこで聞いた声に、耳を疑った。
「あぁあああああっっ………!!」
慟哭だ。
激しい……血を吐きそうな叫び。なんだ、誰か重傷者が悪化した?――――いや、聞き覚えのある、声だ……。
僕より先に、アーチさんが小さく呟いた。
「―――――兵長………。」
人込みをかき分けてたどり着いたそこには、ナナさんの体を壊れそうなほどに抱いて、慟哭を上げる兵長が――――いた。
「ナナ……っ……!!ナナ………っ、やめろ、逝くな……!許さねぇぞ、なぁ、ナナ……っ……!」
どれだけ仲間を失っても、目の前で大切な人を諦めなきゃいけない状況でも……涙の一つも見せず、取り乱すなど一度たりともなかったリヴァイ兵長が……錯乱したように血に塗れたナナさんを抱き締めて、涙を流している。
「――――ナナ、ナナ……っ………、ぁああああっ……………」
僕にも現状がうまく把握できなかった。
……さっきまで……数時間前まで、笑ってたナナさんが……血に塗れて……血を吐いたような、跡……。
僕は急いで兵長に駆け寄って、兵長の肩を掴んだ。