第242章 慟哭
精一杯の理由を並べてみても、リヴァイの殻を破ることはできなかった。ぐ、と怯みつつも、アーチもまたここで折れるわけにはいかないと、小さく拳を握りしめて言った。
「いつまでもいつまでもビビッてないで、今できることをやれって言ってんだよ!!後悔しないように!!!」
「…………!」
アーチの剣幕に、リヴァイは目を開いた。
「元人類最強が聞いて呆れるな!!ビビッて、逃げて……、閉じこもって……!あんた言ったよな?!あの日俺に……『生かされた者の使命だ』って……!『のたうち回ってでも生きろ』って……!偉そうに言っといて、自分は残りの人生を消費してる、だと?!ふざけんな……っ……!」
「――――………。」
アーチの目からはぼろぼろと涙がこぼれて、古びたダイニングテーブルの上にぽた、ぽた、と染み込んでいく。
リヴァイは感情を露わにして自分に訴えかけるアーチにサッシュとリンファの姿を重ねながら、ただその言葉を素直に、聞いていた。
「もっとみっともなく足掻いて生きろよ!!心底愛した女だろ!!いつまでもビビッて思い出に縋ってないで……自分の足で動けよ!!クソ馬鹿野郎!!」
「――――………。」
はぁ、はぁ、と取り乱した呼吸を整えながら、アーチは自身の腕で涙を拭って俯いた。そして言い過ぎた……と気まずそうな顔をしてリヴァイには目を合わせられないまま、小さく呟いた。
「――――あんたに、笑って欲しいよ。」
「…………。」
「幸せになって欲しい。そう、願ってんだよ、みんな……。」
「―――――………。」
大事なものがあまりにも、その男の手から零れていった。
希望を持ち続けることがいかに辛いことなのか……想像すれば、アーチにもわかった。
戦い、失い、疲れ果てたリヴァイをそっとしておいてやるべきかとも考えた。
――――でも、それでも前を向けとかつて自分を導いてくれた男がこれから後悔しない生き方をできるように、疎ましく思われようとも何とかしなくてはならないと思った。
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