第242章 慟哭
「届いてましたよ。ガビとファルコからです。」
「………!!」
リヴァイはいつも、配膳されてすぐ紅茶の香りが最も良いタイミングで一口、口をつける。けれど何よりも先にその封筒に手を伸ばした。静かにその封筒を開封して、左目が文章を追って左右に動く。
その表情をアーチはずっと、見ていた。
やがて小さなため息とともに伏せられたリヴァイの長いまつ毛を見てアーチは、パッと明るい声色で提案をした。
「兵長。これ飲んだら、掃除しましょう。」
「あ?」
「兵長らしくない。空気も淀んでて……あちこち埃も溜まってる。体にも良くないですから。布団も干してシーツも洗って……空気を入れ替えれば気持ちも――――」
「断る。」
アーチはびく、と震えた。震えるほど……リヴァイの目からは断固として拒否するという強い意思と苛立ちが伝わってくる。ぴり、と空気が痺れるような……元人類最強の威嚇は、アーチを怖気づかせるには十分だった。
けれどアーチも譲れなかった。
何のために自分がここに来ているのか。ここで引き下がってはいけないと……ごくんと一度生唾を飲み込んでから、もう一度リヴァイに問う。
「そんなに怖いですか?」
「――――………。」
「ここにナナさんのいた形跡がなくなることが?」
「――――お前に関係ねぇだろう。」
「ありますよ。これまで多くを守って傷ついてきたあんたが……これから最高の人生を送ってくれなきゃ、俺……リンファと兄ちゃんに顔向けできないんで。」
「別に死にはしねぇよ。それなりに残りの人生を消費してる。リンファとサッシュにはそう言っとけ。」
「あとケニー隊長からもどやされそうですし。」
「いらねぇ世話は迷惑だって言ってんだ。」
「…………!」