第20章 始動
睫毛が触れる距離―――――唇を塞がれる。
こんな、廊下の真ん中で―――――誰かが見ていたら……と私はリヴァイさんを押し返そうとするが、いつものことだ。敵うはずがなくびくともしない。
「――――……ぁ、だ…め……です……っ………!」
顔を背けてなんとか抵抗すると、リヴァイさんは唇をぺろりと舐めて私の頭を撫でた。
「今日はハンジの代役、よくやった。褒めてやる。――――早く、寝ろよ。」
そういって何食わぬ顔で私の横を通りすぎ、執務室のドアノブに手をかけた。
「………もうっ…………!」
私ははやる心臓を押さえながら、バタバタと足早にその場を去った。
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「―――――――なぁ、見てたよな?俺に言う事があるんじゃねぇのか?」
ナナが去ってから、柱の陰の人影に声をかけると、ゆっくりと影の主が姿を現した。
「盗み見とは、感心しねぇな。」
「……………。」
「話があるなら、聞こう。」
厄介な芽は早めに摘んでおく。
俺はその人物と二人で話すために、執務室に招き入れた。
「―――――話は、なんだ。手短に済ませろ、―――――――アウラ。」