第20章 始動
「でもそうか、調査兵団の兵士なら、団長補佐の肩書が良い牽制になっていたが―――――一般市民の彼らには、効果はないに等しいのかもしれない。今まで以上に、気をつけなさい。あまり、私やリヴァイの側を離れるんじゃない。」
「……それは………身に余る贅沢ですね。……お言葉に甘えて、そうします。」
私は抑えきれない照れ笑いを返して執務に取り掛かった。
全ての執務が終わる頃、今日が終わろうとしている。団長室を出た私は、その横の扉の前で佇んだ。
顔が、見たい。でも―――――――――
私はリヴァイさんの執務室の扉に手を当て、そっと呟いた。
「………おやすみなさい。」
自室に戻ろうと振り返ると、向こうから会いたかったその人の形が見える。
「………何か用か?」
ドキリとする。
お風呂上りの濡れた髪と肌に沿う薄いシャツは、私の目には毒だ。
「いえっ、あの、おやすみなさいを………言いに来て、ちゃんと我慢しました。」
「………なんだそれは。」
「………では、失礼します………。」
赤くなった顔を隠すようにうつむき加減でリヴァイさんの横を通り過ぎようとしたけれど、腕を掴まれてしまう。
「っ!!」
「……そんな顔で、このまま帰せるかよ。」