第241章 結末②
がたん、ごとん、と列車音を鳴らす列車に揺られて、遠ざかるスラトア要塞を窓から見ていた。言った通り次の列車に合わせてナナは全ての処置を終えて、俺の元に戻ってきた。
街へと降りる列車の中で、ナナが俺の手にそっとその小さな手を重ねてくる。なんだ、と思いナナに目をやると、悪戯な目線を俺に向けてから甘えるように俺の肩にことん、と頭を預けた。
「何を甘えてやがる。」
「………少し、疲れました。」
「……そうか。」
「リヴァイさんは?体……痛い……?」
「痛いな、まぁ……あちこち。」
「でしょうね。あ。」
「あ?」
ナナはふふ、と笑う。
ナナが預けていた頭を起こして、穏やかな笑顔を向けた。
「まだしばらくかかりますから……横になるなら、膝枕しますよ。眠りますか?」
「……いらねぇ。ガキじゃねぇ。」
「……えぇ……。」
せっかくの提案をふいにするんだ、と不満を呈したそうに唇を尖らせる。
あぁよかった、なんとかこのまま……街につけば、早々にこいつを病院に行かせられる。ボルツマンが診てきたあの病がナナの命を脅かす前に、早く対処するに越したことはない。
ナナの頭押さえて無理やり、俺の肩にもう一度預けさせる。
「――――休んでろ。顔色が悪い。」
「………すごく、落ち着く……。」
「だろうな。休め。」
「はい、リヴァイさん……。」
ナナが寝息を立て始めて、しばらくの間……ただ静かに、列車に揺られる。
マーレ兵が事の顛末を興奮気味に話していたり……中には俺たちに畏怖や好奇の目を向けたり……殉死したのであろう仲間を想い涙を流したり……家族の写真を眺めたり……この小さな列車の一室に、多くの命とそれが生きているという証の音が、溢れていた。
ざわざわとしていたが……不思議と悪くねぇと思える。
こんなにも穏やかでいられるのは、俺の肩に……ナナの体温を感じられるからだ。
そんな穏やかな空気も束の間で……急にナナが体を起こした。