第241章 結末②
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――――腕を引き寄せて、無理やり体を俺の方に向かせる。
ナナは困ったように眉を下げて、ふ、と小さく笑った。いつもの……真っ赤な唇とは違う血色の悪い唇と青白い顔に、嫌な予感がする。
けれどナナはなんともない、と微笑む。
「もう終わるので待っててください。次の列車には乗りましょうね。」
「………お前、もう動くな。俺の傍でじっとしてろ。」
「………それはできないです。」
「…………。」
「私がここに生きてる意味です。一人でも多く救う。それが……この先のパラディ島の未来にも繋がるって信じてる。」
ナナのこの顔に、俺は弱い。
ナナの意志は強かった。
ずっと言ってきた言葉だ。
『戦えないことを引け目に思うな』それを体現して、ナナはできることを……自分にしかできねぇことをやろうとしている。
飛行船や飛行艇の操縦もそうだ、負傷者を処置することも……。
だが……怖いんだ。
このままお前がどこかに……行ってしまいそうで。
「……誰か!誰か……手当してやってくれ!」
「!!はい!今行きます!!」
遠くからマーレ兵が助けを呼ぶ声がした。
ナナは間髪を入れずに返事をして、渋る俺の方へと一度振り返る。ナナを止めきれず舌打ちをする俺の頬に手をやって、ガキをあやすように一撫でしてから小さく言葉を残した。
「リヴァイさんはいつまで経っても心配性なんだから。」
ふふ、とナナが笑う。
本当は怪我人の一人や二人くらい見逃したって罪になどならねぇだろうと言って、また腕に閉じ込めたい。
だが……ナナは誰かを救おうと、守ろうとする時ほど生き生きと目を輝かせるから。
―――――俺は走っていくナナの背中を、ただ見つめた。