第241章 結末②
素直じゃない兵長が目を逸らしつつ不愛想に返事をして、そんな兵長にナナさんが優しい微笑みを向けて……直後、ナナさんはすごく辛そうな……顔をした。
一瞬だった。
兵長がナナさんの方へと目を向けると、ナナさんはパッとまた、なんでもないように笑顔を向ける。
「――――………ナナさん?」
「はい?」
「あんた、何か―――……」
「あと少し軽傷の方を診れば終わりです。私、行きますね。」
ナナさんはいつも相手の話を最後まで聞くのに。
なぜか急にあわただしく、俺の言葉を遮るようにすくっと立って背を向けた。
不自然なくらいに。
その顔は、今までとうって変わって……なにかひどく、良くないものに追われているかのような……怯えるような、そんな顔だった。
「―――おい、待てナナ。」
兵長もそれに気付かないわけがなく、ナナさんを呼び止めた。
ナナさんの、肩が震えた。
「ダメです。私まだ、やらなきゃいけないことが――――」
「こっち向けナナ!」
いつも兵長の目をまっすぐに覗き込んで話をするナナさんが、兵長の方へ振り返ることすらしなかった。
兵長がナナさんの腕を掴んで、無理やり引き寄せた。
――――振り返ったナナさんは、困ったように……
どこか悲しそうに、笑ってた。