第20章 始動
翌朝。
リンファとサッシュさんはそれぞれ班長に任命されており、各10名ずつの新人の訓練を行うことになっていた。
私は通常時よりもはるかに多くの雑務に追われていたため班を専門に受け持つことはなかったが、空いた時間はナナバさんの班のお手伝いをすることになっていた。
早くもハーネスを着用し、立体機動装置に慣れるところから訓練は始まっている。団長室で補佐の執務の傍らに、訓練の様子を見下ろす。そんな私に気付いたのか、エルヴィン団長が同じように窓の外に目を向けた。
「………おや、一般市民兵の中でも筋がいいのがいるね、何人か。」
「あ……あれは、グンタさん。」
一般市民兵のほとんどがろくにバランスをとってぶら下がることすらできず、バタバタと身じろぎする中、グンタさんは平然とバランスを保っていた。彼は体格に恵まれているため、筋力もあるのだろう。
「ほう、もう覚えているのか。」
「昨日一般市民兵の中の一部の方に絡まれそうになったのを助けてくださったので。」
「………絡まれたのか。」
「未遂です。」
「……………本当に危なっかしいな君は。また、その強気な瞳で啖呵を切って相手を煽ったんじゃないだろうね?」
図星だ……私は不自然に目を上に泳がせた。
「煽ったつもりは……ないのですが………。」
「いつだって君は“つもりなく”煽るからね。気を付けたほうがいい。」
「………はい。」
私は少し膨れて、しぶしぶ頷いた。