第240章 結末
「――――エルヴィン……ッ……。」
ナナが涙ながらに呼んだエルヴィンは、ナナに手を伸ばした。
その姿を見て我慢できなかったのだろう、エルヴィンに駆け寄ろうと立ち上がりかけたその腕を掴んで、ナナを無理やり俺の腕の中に引き戻す。
「――――行かせねぇよ、ナナ。行くな。」
「…………!」
「――――俺を都合良く使っておいて、ナナは連れて行こうってのか?相変わらずクソほど身勝手な野郎だな。ふざけんなよ、エルヴィン。」
ナナを腕に閉じ込めたままエルヴィンに対して威嚇の目を向けると……エルヴィンは俯いた。
そして再び俺たちに背を向けて――――消えた。
だが俺は見た。
背を向けるその直前、口角をわずかに――――引き上げやがったことを。
「おいナナ。」
「…………は、い……リヴァイ、さん……。」
「てめぇもてめぇだ……。お前は俺のものだと言ったよな?またふらふらとあいつに付いて行こうとしやがって。」
「ごめ、ん……なさい……。」
ナナが申し訳なさそうに目を伏せている。
その顎を指で掬って上を向かせると、一瞬俺をその両目に映してから、気まずそうに目を背けた。
「顔を見せろ、ナナ。」
「…………。」
ナナは下方向の左右に目線を泳がしてから、意を決したように俺を見つめた。
「――――なんか、言うことねぇのか。」
「……言うこと……?」
「そうだ。」
「…………お疲れ様です。」
「そうじゃねぇ。」
「あっ……、怪我、診ます……!」
「そうじゃねぇ。……むしろお前の方が重傷じゃねぇのか?」
慌てて血まみれだったナナの体の外傷を確認してみるが……どこにも、目立った外傷はなかった。