第240章 結末
『――――お前の信じるように、やれ。ミカサもアルミンもナナも……ジャンやコニー、アーチ、そして俺も……最後までお前と向き合って見届ける。』
『…………っ………!』
『――――一人でよく耐えた。よく頑張ったなエレン。もう、お前も楽になっていい。』
『――――リヴァイ、兵、ちょ………。』
エレンは泣いた。
俺の背におずおずと手をまわして、だがその手は何かに縋るように俺の背の自由の翼をぎゅっと、爪を立てて握りしめながら……ひくっ、と呼吸を上ずらせて、俺の肩に頭を預けていた。
しばらくそうしてガキをあやす様にエレンを抱きとめていると、エレンが目を赤くした顔を上げた。
『――――ナナをよろしくお願いします。俺の……初恋の、女なんです。』
『奇遇だな。俺もだ。』
俺の返答にエレンは驚いた顔をしてから、ガキらしい柔らかな満面の笑みを見せた。
『―――じゃあ、兵長。』
『ああ………エレン。』
エレンの頭を指の足りない手でくしゃ、と撫でると……くすぐったそうにエレンは笑って、その空間は閉じられた。
そのすべてを今、はっきりと思い出した。
「あの……クソ馬鹿野郎が……。」
なんとも言えないこの胸が締め付けられるような心地を持て余しながら小さく呟いて伏せた視線に、ふと影が射した。
目線を上げると……一瞬その背後に輝く太陽に目が眩む。
太陽を背にした人物が真っ黒に映って、やがて少しずつ色調が整っていき、ようやく認識した。
――――いつもいつもお前は泣いてばかりだ。
けれどその涙は悲しい涙じゃねぇよな。
――――ナナは、涙を流したまま柔く、笑った。