第240章 結末
エレンに “道” に呼ばれて、そこで話をした。
そこに現れたエレンは……調査兵団に入団した時の、短髪で幼い……いつも兵長兵長と言いながら俺の後ろをついてきていた、エレンの姿だった。
『――――なんだ、こんなところに呼びやがって。』
『兵長と、話したくて。』
『……何をだ。』
『調査兵団の皆が捧げた心臓は無駄にしない。この世から巨人の力は消え去る。大丈夫です。安心して、兵長。あなたのこれまでは報われるから。そして……すべての巨人の力がこの世からなくなったら……ナナはあなたの腕に戻る。俺にはそこまでしか視えないけど……その先もきっと、あなたがナナを守ってくれるんだって信じてます。――――ずっと俺を……守ってくれていたみたいに。――――兵長。』
『――――好きで守ってたんじゃねぇ。お前が事あるごとに暴走したり攫われたり食われそうになったりするからだ。ナナも同じくだ。面倒な奴らだな本当に。』
『――――あなたが守るのは、大切だからですよ。じゃなきゃ、こんなに心身ともに削りながら誰かを守るなんてできない。』
『――――………。』
『俺のことも、大切に思ってくれていたこと、知ってます。』
『あんだけ蹴ったのにか。』
『だって全部、意味があるから。』
『……フン。』
『ねぇ兵長、一つ俺ずっと聞いてみたかったんですけど。』
『なんだ。』
『――――俺にナナをとられるかもって、心配しました?』
『は?』
『あっ傷つくなぁその顔。危機感どころか、考えたこともなかったんですね……。』
エレンがしゅんと肩を落とした。唇を尖らせて、俺を大きな目で見つめている。
『当たり前だろうが。ナナにとってお前はせいぜい弟だ。ナナの男になろうなんざ100年早ぇ。それにナナは俺とエルヴィンにしか特別な感情を抱かない。無理に決まってんだろ。』
『え、すごい自信ですね……。その割には俺が手を出した後、ナナに嫉妬ぶつけまくってた気がしなくもないですけど。』
『うるせぇ黙れ削ぐぞ。』
『はは……。』
エレンは薄い笑いを零してから、頭をポリポリとかきながら目を泳がせた。