第240章 結末
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ミカサの凛とした声は、すべてを物語っていた。
迷いがない。
動揺も、慌てふためく様子も微塵もなかった。
――――こいつは、やれる。
正直、ミカサがエレンを殺すことなど不可能に近いと思っていたが……澄んだ深い漆黒の瞳が、愛しい者と相対するようにまっすぐにエレンに向けられていた。
「了解だ。ミカサ。」
お前がエレンと共に出した答えなら……それを果たせるように、力になる。ナナ、お前が目を輝かせて語っていた3人のガキは……えらく大人になった。苦しみ傷ついてなお立ち上がって……この世の負の連鎖を、終わらせようとしている。
愛しい者の命をその手で終わらせる覚悟をしたミカサを、俺は……凄い奴だと思った。
俺にできるか?
ナナを、この手で殺せるのか?
仲間のこともエルヴィンのことも家族のことも……俺のことも全て忘れて、人間を食うためだけに彷徨うくらいなら、ナナは殺してくれと言うだろう。ナナの願いは叶えてやりたいと……そう思って生きてきた。
そのお前が、俺が最も忌避したいそれを望む。
どうすればいい?
到底答えの出せない問をひとまず頭の片隅に追いやって、目の前のエレンの口に風穴を開けることだけを考える。
雷槍は一本しかない。
これで確実に……ミカサをエレンの元へ送り届ける。アルミンが察して、自らの顔面にエレンの拳を受けながらもエレンの肩と頭を押さえた。俺の放つ雷槍をよけれられないように、確実に食らわせるためだ。
その機を逃さず、エレンの歯を狙って雷槍を――――打ち込んだ。
砕けた歯の隙間から、その奥に孤独に揺れるエレン本体の首を見た。
ミカサはすかさずその砕けた歯の隙間からエレンの元へと急ぎ、その刃で迷うことなく……愛した者の首を一閃し、その命を終わらせた。
見事だった。