第240章 結末
その時の頭痛はこれまでに類を見ない、まるで頭を割られるかのような――――痛みだった。
ガンガンと鈍器で思い切り殴られたような痛みは……まるで誰かの意思で操作されているように、エレンのことを深く想えば想うほど顕著に現われていた。
私はあまりの痛みに、そこから逃げるように目を閉じた。
その先に見えたのは――――
なぜか穏やかで緑が香る森の中。
青い空を背景にそびえたつ山々は、パラディ島では見たことがないほどの雄大な景色。それらを臨む丘陵にぽつんと建てられた山小屋に……私とエレンはいた。
現実から逃げて、仲間を見殺して、島の皆も見殺して………エレンと2人静かに生きる。そんなもう一つの小さな願いを込めた世界を、私の脳内では色も、音も、匂いも、感触も鮮やかに生み出していた。
ずっとずっとこちらの世界に浸っていたいと思えるほど穏やかで幸せすぎる時間のはずなのに……最後にエレンが言った言葉が、私を現実に引き戻した。
なんて悲しいことを言うのだろう。
なんて……寂しい。
「俺が死んだらこのマフラーを捨ててくれ。」
エレンを見上げて、その理由を目で問う。
「お前はこの先も長生きするんだから……俺のことは忘れて、自由になってくれ。頼むよ……ミカサ。忘れてくれ。」