第239章 不帰
その言葉を聞いた瞬間、一瞬で兵士長の俺が頭の中に最適解を導き出した。
ここは巨人の巣になる。
九つの巨人の力を持つものと、巨人化しないアッカーマンである俺とミカサはファルコの背に乗ってここを離脱する。
――――そしてエレンに止めを刺す。
それが正しい。
だが、躊躇ったのは……もう一人の俺だ。
ナナを残していく?
ここに?
もしまだ鼓動があるとしても……あの煙を吸ったらもう、巨人化して……人間を食おうと彷徨うのか?
……そのうなじを……俺が削いで殺すことになるのか?
それとも……もう鼓動が止まっているとしたら……
周りで巨人化した奴らにその体をぐちゃぐちゃに踏み潰されて……その亡骸すら抱いてやれないまま……血肉だけになって地に、還るのか……?
――――ありえねぇ。
どちらも。
駄目だ。
これ以上そんな最悪な未来を考えると俺は――――……何もできなくなる。
この心臓を止めて……ナナと共に死にたいとすら、願ってしまう。