第239章 不帰
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アルミンの巨人化によって、エレンが纏っていた巨大な骨も崩れ落ちた。だがあの光る触手はまだうねうねと動きながら、新しい宿主でも探しているかのように意思を持って蠢いていた。
超大型の爆発にも耐えたライナーがその触手をエレンに接触させまいと、まだ戦っている。
ファルコがスラトア要塞に降り立った。
地鳴らしが止まったことと家族の帰還に歓喜し喜びを分かち合い、泣き崩れる者達の中に降り立った俺は……ナナの姿を探した。無事なら……真っ先に俺たちのところへ駆けてくる。だがその姿はなく……どくん、どくんと鼓動が早くなる。
最悪の想定通りの未来が待ち受けていたとしたら……。
そんな私情に浸りきる間もなく、超大型のアルミンの背後で、巨人化の発光が起こった。
そこには、超大型と引けをとらないデカさの……黒い長い髪をなびかせた憎悪の権化のような姿がまた在って……、今度は二足歩行で、アルミンの方へと近づいていく。
「……ちっ……エレンの野郎……。」
エレンの性格を熟知している104期の奴らは、想定内だと言葉をこぼした。
「まぁ……やはりな……お前があれで死ぬとは思ってねぇからよ……。」
「あぁ……でも、どうすりゃいいんだ。」
「――――エレン………。」
エレンを殺すまでこの悪夢は終わらない。
なぁそうだろうエレン。
俺たちにそれを、望んでいるんだろう?
「エレンを仕留める。わかっただろ……奴を殺すまでこの悪夢は終わらねぇ。」
もう一度エレンへと攻撃を試みる、その指示を口にした瞬間、民間人の大きな声が聞こえた。
「誰か!!誰か医者はいないか?!大変なんだ……!!不時着した飛行艇の搭乗者が瀕死だ!!」
ぞわ、と全身が粟立った。
「―――っ兵長!!!」
俺の腕を掴んで、俺よりも取り乱したのは……アーチだった。