第239章 不帰
……ただ願わくば、大事で仕方ないお前らの幸せを見届けたかった。それはもう、叶わないけど。
兵長……兵長、ナナを助けて。
死なせないで。
――――俺の大事な家族なんだ。
散々勝手をして、我儘だってわかってる。
「この出血量……やばいんじゃないのか……?とにかくあっちの人がたくさんいるところに運ぶぞ!!医者がいるかもしれん!!」
「……ったの、む……その人……、助けて……。俺は、後でいいから……!」
「お前もしゃべるな、酷い怪我じゃないか!!」
「頼むから……っ……!あの人のために、死なせちゃ、ならないんだよ……っ!!ナナさん、なぁ……!起きてくれ……!」
「落ち着け、俺たちに任せろ!!」
この視界の主がナナを何とか救おうとしているのがわかる。そんな中、俺の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
「この……死に急ぎクソバカ野郎がああぁあああ!!」
――――ジャン。お前が終わらせてくれるのか。
ジャンの押した起爆装置によって爆発が起き、俺の頭がぐらりともげて……地に落ちた。
なぁジャン。
俺達ってやっぱり最後まで……こういう意地の張り合いになるんだよな。笑える……。でも俺はこの程度じゃ死ねないから。
なぁミカサ、アルミン、ジャン、コニー、……兵長。
頼む。
俺を止めてくれ。
―――お前たちが手にする自由の前に倒れるのなら、俺は本望だ。
戦って戦って……お互いの信じるものをぶつけ合おうじゃないか。
そして俺はお前たちによって屠られる。
それがこの悪夢の、唯一の結末だ。