第239章 不帰
ジャンやアーチ、ピークとライナーの手に余っているようなら加勢する。再びファルコに頭骨の方へ赴くように指示すると、数体の巨人がジャン達を援護しながらついにその巨人群をジャンが抜けたのが見えた。
ライナーとピーク、アーチの鬼気迫る声が響いた。
『行け!!ジャン!!』
ピークが巻き付けたエレンの首元の起爆装置を確かにジャンは掴んで、躊躇うことなくそのスイッチを、押した。
「この……死に急ぎクソバカ野郎がああぁあああ!!」
憎悪の権化とも言える恐ろしい風貌のエレンの脊椎にあたる部分が大きく発破され、ドォン!!!!という轟音と共に……もうまるでエレンの面影もないその頭は、黒髪を乱しながら地に落ちた。
だがそのエレンの首を追うように、諦めの悪い “何か” がうねうねと気持ち悪い動きをしながらエレンの方へとすり寄っていく。巨大な光る触手のような……まるでその “何か” は、エレンを器にしようと企むようにしつこく、エレンを追う。
鎧を纏ったライナーがそれを阻止しようと、その “何か” を体を張って止めた。何とかエレンとの接触を避けられたが……時間の問題だ。
今この瞬間に、アルミンの巨人化の爆発によって完全にエレンを――――消し去るしかない。
「ジャンとピークを回収するぞ……!」
『はい!!』
ファルコはその翼を操り、ジャンとピークをすかさずその背に回収した。
「待ってくれ!!ライナーが!!」
ライナーをそのままにして行けないとジャンが躊躇うが、ライナーの言葉を代弁したピークの一言で皆、腹を括った。
「鎧の巨人ならきっと超大型の爆発に耐えられる。……何よりこの機を逃すことは、ライナーの覚悟をふいにするも同じ。」
俺たちがエレンの傍から離れたその瞬間、アルミンの巨人化が起こり……すべてを無に帰すような爆発が起こった。
泣きわめくのかと思っていたが……俺の隣でミカサは、目を逸らすことなくそれを、見ていた。