第238章 光芒
「クサヴァーさん。」
ジークさんは、眼鏡をかかけた男性をそう呼んだ。その男性は、柔らかく、微笑んだ。
「俺たちの望みは叶わなかったよ……安楽死計画は間違っていなかったと今でも思う……。でも……あなたとキャッチボールするためなら、また……生まれてもいいかもなって……。」
その横で悲しげに微笑むエレンとジークさんのお父さんに向かって……ジークさんは、まだ溶け切れていないわだかまりを残したままの表情で、言った。
「……だから……一応感謝しとくよ。父さん……。」
ジークさんはけじめをつけた。前を向こうとした。
――――だから僕も。
君に言うよ、ちゃんと。
「――――ベルトルト。僕は君からすべてを奪った。命も……力も……大切な記憶も……だからわかるんだ。ここでじっとしてられない。」
時折君は僕の頭の中に……現れた。
君はいつも悲しそうだった。
それはなぜか。
君を食らいすべてを奪った僕への怒りか、悲しみか。
それとも……君はもともと優しすぎるところがあるから……自分の悲しい運命を引き継がせてしまったと……僕を、心配してか。
見上げたベルトルトは、やっと……少し、笑ってくれた。
「力を貸してくれ。」
僕とジークさんの言葉に、そこに現れたみんなは小さく口元に笑みをこぼして、頷いた。