第238章 光芒
生命とはなにか。
始祖ユミルがなぜこの巨人の力を生み出すに至ったか……ジークさんは語った。聞けば聞くほど、始祖ユミルの思惑や目的がわからない。この場所には時間の流れは存在せず、ジークさんは気の遠くなるほどの時間をかけて、ユミルを理解しようと試みた。
けれどその心を理解するに及ばず、それを理解しユミルの心を溶かして…その力を手に入れたのが、エレンだという。
「教えてください!!ここから…・・・何か外の世界に戻る方法はありませんか?!」
「さぁねぇ……もう無理だと思うけど……。」
「僕は何も諦めていません。」
ジークさんは諦めていた。
ここから出ることに、じゃない。
生きることも、この世界の理にすら……もうすべてがどうでもいいんだ。虚ろな目はただずっと砂をいじくる手に向けられていて、いくら話をしても僕の目を見ない。
「種を存続させることが君にとってそんなに大事なことなのか?今起きていることは……恐怖に支配された生命の惨状と言える。」
この人は……何を言っているのか。僕には到底理解できなかった。
「仲間が……戦っているんです!!今ならまだ多くの人々を恐怖から救えるから……!!恐怖と戦っているんです!!」
「なぜ負けちゃダメなんだ……?生きているということは、いずれ死ぬということだろう?」
―――だから今死んだところで、足掻いたところで……それは全て無意味だと、そう言うのだろうか。
なぜ。
確かに人はいずれ死ぬ。
いうなれば、死ぬために生まれてきたという極論だって成り立つ。だけど……生まれてきたその時から、死に至るまでの時間が有限だからこそ……そこに見出す何気ない日常や、近しい人たちの笑顔や言葉……美しい景色や、負の感情ですら……愛しいのではないか。
僕はそう、思う。
この人には……これまで生きてきたその中に、そんな大切な時間が存在しなかったのだろうか。