第237章 憂悶
――――どう見ても状況は最悪だ。それをミカサも察したのだろう。自分に巨人を引き付けようとして、叫んだ。
「来い!!!私は強い!!!ので!!!いくらかかって来ようと―――――」
その声を掻き消すように、ごぉおおおお、と風を裂く音と共にその合間から、ここにいるはずのねぇ奴の声が聞こえた。
「ミカサ!!あんたちょっと邪魔!!!」
「ッ……?!え―――――」
「捕まって!!!」
目に入ったのは翼。
自由の翼。
そう見えた。
いや、これはなんだ?鳥?
エレンの巨大なあばら骨の間をすり抜けて一時離脱した俺達は目を疑った。船に乗ってヒィズルに向かったはずの――――アニが鳥の背に乗って、俺達を回収したようだった。
「いや……私もまさか本当に巨人が飛ぶとは思ってなかったんだけど……本当に飛ぶから……もう……行くしかなかった。」
『アニ!!!!』
「でも……来て良かった。」
アニの言葉から察するに、これはファルコか。
一度その最悪の状況から脱して、作戦を練り直す。立て直す時間を与えてくれて助かった。
――――だが一瞬、スラトア要塞の方に目を向けた俺は心臓が凍るような光景を目にした。
両翼がもげ、焼け焦げ、煙を上げて大破に近い状態の飛行艇だ。
―――――ナナ。ナナ。
まさか………まさか。
いや、今は目の前のことを。
エレンとジークを止めることだけを。
そうしなければ、全ての心臓が、報われない。
――――こんな時にも真っ先にすべてを投げ出してお前の元に駆けられない。
だがそれでいいんだろう?
お前はそう望むよな。
―――――なぁ、ナナ。