第237章 憂悶
“……リヴァイ、さ……”
幻聴まで聞こえ始めてるのか、頭の中にナナの顔が、俺を呼ぶ声が、鮮やかに映し出された。
ほんの一瞬、俺は落ちていたらしい。
「起きてコニー!!」
俺を呼び戻したのはミカサの声だ。
なんとか瞼を上げて見まわすと、意識をなくしたコニーが立体機動のワイヤーにぶら下がってやがる。あのままじゃ恰好の巨人のエサだ。そのエサをいただこうと、見たこともねぇ気味の悪い巨人がデカい口を開けてコニーに迫る。
俺も、死ねねぇが……こいつら誰も、死なせるわけには、いかない。
力の入らない足に鞭を打ってコニーの元に飛ぼうとした瞬間、すぐ側で生意気な声がした。
「言ったでしょ、俺のほうが戦れるって。」
兄弟揃って生意気だな、お前らは。
俺の横をすり抜けて、コニーを狙う巨人の面に斬撃を入れたのは、アーチだ。
「……クソ、生意気だな……!」
アーチの後を追ってその巨人のうなじを削いで止めをさした。ちょうどコニーが目を開き、なんとかその場は切り抜けたものの……冷静に周りを見りゃ、もう巨人化できる力も残されていそうにないライナーと、救いだしたライナーをなんとか抱えているが立体機動が使い物にならなくなったのであろうジャン。
ダメージを負ったコニーと、元々万全じゃない俺とアーチ。
万全なのはミカサだけだ。
ピークはどうした?
頭骨の方へ起爆装置を持って行ったまま、戻って来ねぇ……やられたのか?
アルミンは依然として見つからないまま……。俺達を囲む歴代の九つの巨人の数は、増える一方だ。
俺達がそんなに怖いか、エレン。
次々馬鹿みてぇに巨人を生み出しやがって。