第236章 死線
体が浮くような心地がして、機体が大きく傾いた。同時に大きな衝撃と、バキッと何かが破損した大きな音がした。
窓から、無数の飛来物を見た。
――――投石?の一部が機体を掠めたのかもしれない。
頭の中にそれが蘇る。
あなたもまた、あの時この投石に向かって特攻したの?
――――怖かっただろう。
痛かっただろう……。
いつまで経ってもまだ、その瞬間を想像すると胸の奥が軋むように痛む。
これが投石だとしたらそれは、そこに……いるんだ。
リヴァイ兵士長も私と同じように……、彼のことが一瞬頭を過ったのだろうか。唇を噛みしめ、ビリビリと殺意を放ちながら言った。
「……いやがるな……、獣のクソ野郎が!!」
「――――っ……!」
ジークを殺せば地鳴らしは止まる。そう願って……彼らを送り出す。でも私の心の奥には確かに、愛しい人を奪ったその男への憎悪が、根付いている。
「……探す手間が省けた!!攻撃目標は!!獣の巨人!!これに全ての力を用いて撃滅!!地鳴らしを食い止める!!」
アルミンの大きな指示が飛んで、搭乗口を開く音と共にオニャンコポンさんからそれが知らされた。
「今だ!!飛べ!!」
―――飛べと、言われて一瞬でも躊躇したら……タイミングを逃す。でも、怖いはずで。この高度から……いくら立体機動装置をつけていたとしても、空を自由に飛べる代物ではない。当たったら即死の飛来物をかいくぐってエレンに近付かなくてはいけない。
アルミンの後ろ姿を横目で見た。
――――震えてるんじゃないかって、心配だったから。
――――確かにアルミンは躊躇、したかもしれない。けれどそれを誰にも見せることなく、団長らしく……先陣を切って飛んだ。
あぁこうやって彼もまた、強く……なってきたんだと、僅かに目元が潤む。
エレンをお願い。
アルミン。ミカサ。
あなたたちの声は、きっと……届くから。