第236章 死線
けたたましいエンジン音が徐々に静かになりつつあった。
燃料計の針は0を指しながら、機体の揺れにあわせてふるふると揺れている。
「クソ……!もう殆どエンジンが動いてない!!」
オニャンコポンさんが操縦桿を強く握りしめて、前から一瞬たりとも目を離さない。
エンジンがほぼ機能していない以上、これまでの飛行の慣性と気流の流れをよく読んでそれに乗る……しかない。
とても繊細な操縦をやってのけるのは、彼の有能さを物語る。
「早く飛び降りるよ!!」
搭乗口付近で、アルミンが下降のタイミングを測る。
「オニャンコポン、ナナさん早く準備を!!」
未だに操縦席にベルトで身体をしっかり固定したままのオニャンコポンさんと私に向かってジャンが準備を急く。けれど、最初から私たちは一緒にエレンの上に飛び降りる予定をしていなかった。戦闘においては私たちは足手まといでしかないからだ。
それならばギリギリまで操縦桿を握り、みんなを確実にエレンのところまで送り届けることに全てを尽くす。
オニャンコポンさんも無論、そのつもりだ。
「まだだ、始祖の真上まで舵を取る!!俺達はその後不時着してみせる!!だから確実に始祖の巨人の元へ降りろ!!わかったな?!」
オニャンコポンさんの決意はその言葉の強さから伝わる。ハンジさんの命を懸けて繋いだこの機会を絶対に逃さないという意志の強さだ。
「……有能な副操縦士がいるんだ、大丈夫。心配するな!」
オニャンコポンさんがちらりと私に目を向けて口角を上げる。一人じゃ無理でも、力を合わせればどうにかできるかもしれない。私もオニャンコポンさんに目を合わせて大きく頷いた。
「!!ッ―――――――――避けて!!オニャンコポン!!」
その一瞬、大きな声を発したのはミカサだった。何かを感じ取ったようだ。オニャンコポンさんは咄嗟に大きく舵を切った。
「ッ――――掴まれ!!」