第235章 決裂
エレンは元々その内側にとんでもないモノを秘めていやがった。兵団本部の地下牢で初めて相対した時のあの言葉、あの目は……誰にも飼い慣らせないバケモノのそれだった。
――――それも含めてこいつらは……エレンを受け入れ、共に背負おうと言う。
エレンを一人悪にして、その恩恵を黙って受けることもできるのに、だ。とんだお人好しの集まりだな、調査兵団ってのは。
――――だが、嫌いじゃない。
それに……何より、ナナが守りたいものは俺が守ると……そう、決めている。
「だとよエレン。今ならケツに蹴り入れるだけで勘弁してやる……。おい、何とか言ったらどうなんだ?」
エレンは俺達の話を聞いていたのだろう。その場所に、重く響くような声がした。
“地鳴らしは止まらない。パラディ島の未来を運に任せて放棄することもない。俺は進み続ける。”
――――その答えは、俺達の僅かな希望を打ち砕いた。
やはりお前の望みは……、俺達にケリを着けさせることなのか?絶望したようにナナが膝をついた。
そしてその向こうに……道の柱の前に、小さな人影を見た。
「――――オイ。」
俺が指を差したその先には、ガキの姿が、あった。
「エレン!!」
真っ先にミカサが駆け出した。俺には……ガキの姿に見えているが……、どうやらあれは、エレンらしい。ミカサに続いて104期の奴らが駆け出す。
その背中を膝をついたまま見送ったナナにアーチが寄り添い、背中にそっと手を添えた。
“俺は自由を手に入れるため世界から自由を奪う。だがお前らからは何も奪わない。お前達は自由だ。”
104期のガキ共は全力で道に向かって駆けて行ったはずなのに、エレンの思う通りにこの空間は歪ませられてしまうのか……、ガキの姿のエレンに辿り着くことはできず、俺達の背後に戻ってくる形になり……全員が驚愕していた。
もう、触れさせるつもりもねぇってことだな?
エレンよ。