第19章 不穏
「私は………思うのです………。もし、外の世界が本当にあるとして。こんなに不自然に孤立した国に、何の干渉もしないなんてことが、あり得るのかと。」
「――――――どういう、ことかな?」
「……例えば、この国の一角が………そう、例えばエルミハ区が、どことも通じない、壁の奥で人がどう生きているのかもわからない、得体の知れないものだとしたら―――――エルヴィン団長なら、どうしますか?」
「………知りたいと、思うだろうね。未知とは脅威だ。」
「そうなんです。私も………絶対に、知りたいと、思うはずなんです。危険を冒しても、内情を探る―――――――。」
「…………。」
「それが出来ないのは………巨人がうろついていて手が出せないのか、…… “海” というものが本当にあるなら、それがどうやっても越えられないようなものであるのか―――――、外の世界から、すでに私たちは抹消された存在であるのか――――――、それとも…………ここに、呼び起こしたくないほどの脅威……何かが、あるのか。」
「もしくは―――――――すでに、何者かが紛れ込んでいるか、だ。」
私の言葉に、ゾクリとしたようにナナが少し肩を震わせて私を見る。