第234章 花弁②
私の愛すべきこの世界を、調査兵団のみんなを、ここで終わらせるわけにはいかないんだ。沢山の仲間が繋いで来た希望を、捧げて来た心臓を、途絶えさせやしない。
上空から見下ろしたその目線の先には、超大型が無表情で無慈悲に大地を踏み鳴らす姿。
その姿は不気味で不思議で恐ろしくて、どこか可哀想で……なんとも言えない感情が渦巻いた。
「あぁ……やっぱり巨人って……素晴らしいな。」
先頭を進む巨人のうなじに、雷槍を撃ち込む。
綺麗に爆ぜたそれにより絶命した巨人が倒れ込んだ。ぐずぐずしている暇はない。続いて近くのもう一体に雷槍を撃ち込む。
後はもう刃で削げるだけ、うなじを削いでいくしかない。
接近して斬り込もうとすればその異常なまでの蒸気で身が焼かれるようだ。
「熱ッ!!」
だが怯んでいられない。
一体でも、一秒でも。
食い止める。なんとしてでも。
数体の項を何とか削いだところで、深緑の自由の翼を配したマントに――――炎が燃え広がった。
熱い。痛い。
――――でも。
まだだ。
飛行艇がまだ飛び立ってない。
「うぁぁぁあああああ!!」
心臓を、捧げよ。
その言葉がこれほど怖いと思ったことは初めてだ。
あぁ……君たちが見た景色を今きっと私も見てる。
瞼が焼けたのか……網膜がやられたのか、視界が失われて……気道も鼻腔も焼け焦げたように鋭く痛む。
と同時に、腰の立体機動装置が爆ぜた音がした。
あぁ、ようやく終わった。
私の番も……ついに。
――――どうか、行ってくれ。
エレンを、止めて。
『――――てめぇは何のために生きてる。』
いつかリヴァイが私に問うた言葉をなぜか、思い出した。
「――――私の――――…生きた意味、は――――……。」