第234章 花弁②
真っ白な世界に放り出されたみたいだった。
不思議と痛くも、辛くもない。
私は……気付けば大の字に寝転がって青空を見上げていた。
「飛行艇は?!」
思わずガバッと身体を起こすと、さっきまで誰もいなかったのに……そこには、会いたくてたまらなかったみんなの姿がある。
「飛び立ったよ。」
「え……?」
遠くを見つめるその背中は、私がずっと恨み言を言ってやろうと思っていたその大きな背中だ。
そして彼は振り返った。
「ハンジ。お前は役目を果たした。」
蒼い瞳がいつになく柔らかに、穏やかに私を映す。
そしてその横には、モブリットや……ミケの姿もある。ナナバやサシャ、ペトラやゲルガー、グンタ、オルオ……シャーディス団長まで。
「エルヴィン……みんな……。」
みんなの目線の方向に目をやると、たしかにそこには……私が全てを託した仲間を乗せて飛び立った飛行艇が太陽の光を受けてきらりと、光った。
「……そうか。」
「――――分隊長、手を。」
「ん。まったく……団長になんか指名されたせいで大変だったよ……エレンのバカがさぁ……。」
「あぁ……大変だったな。」
「あぁでも一つだけ感謝しなくちゃ。」
「ん?」
モブリットに手を引かれて立ち上がって、エルヴィンの側でニッと彼を見上げて言う。
「――――大変優秀な団長補佐と兵士長を私に遺してくれて、助かったよ。」
エルヴィンは目を丸くしてから、ふっと優しく笑った。
「―――だろう?そのあたりもゆっくり、聞かせてくれ。」
「――――ああ……。」
――――ねぇリヴァイ、ナナ。みんな。
どうかよろしく頼む。
ここから見てるよ。
君たちに圧力にならないように、こっそりとね。
このことにカタがついたら――――……
リヴァイとナナが、ひたすらに幸せに生きていく未来を見たい。
エルヴィンを窘めながら見守るから。
私の最愛の君たちへ。
――――どうか、生きて。