第234章 花弁②
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性懲りもなくまた、僕は思った。
――――ハンジさんじゃなく、僕が……行けば良かったんじゃないかって。
生き残ったのが僕じゃなくてエルヴィン団長だったなら……もっと良い未来が、待っていたんじゃないかって。
そして――――……超大型巨人をエルヴィン団長でなく僕に継がせたリヴァイ兵長だけでなく……調査兵団団長の座を僕に任せたハンジさんの……期待に沿えるような活躍を本当に、僕が出来るのかって。
怖い。
無理だ。
絶対無理だ。
だって僕は弱くて、いつでもみんなの足を引っ張ってばかりで……結局エレンだって、説得できなかった。
止められなかった。
なんとか無我夢中で飛行艇を押して格納庫から海へと引っ張り出す。巨人の足音が迫り来る中で、必死だった。間一髪海から、離陸をした飛行艇の窓から、まだ戦い続けるハンジさんの姿を目に焼き付けるように、食い入るように滲む視界で見届けた。
いつか本で見た不死鳥のように炎を纏ったハンジさんが空を舞っていて……やがて、飛び回っていたその不死鳥は……まるで花弁が散りゆくように、ひらりと、力なく地に――――落ちていった。
「ハンジさん!!!」
ダン、と両拳を窓に打ち付ける。
悔しい。
不甲斐ない。
死なないで欲しかった。
守れなかった。
色んな感情が混ざりに混ざって、僕は崩れ落ちて――――泣いた。