• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第234章 花弁②





バタバタと慌ただしく飛行艇を離陸させようとする中で、104期の奴らの中に交じって一人、アーチだけが拳を強く握りしめて、ぼそりと呟いたのが聞こえた。





「――――俺が行くべき、だった……。」





サッシュと同じ色の髪をばし、とはたく。






「てめぇにはまだ働いてもらう。ハンジも、それをわかってた。」



「…………。」



「ぐずぐずしてねぇで、もう腹を括りやがれ。」



「………はい……。」






すぐ後ろで、格納庫が巨人の足に踏みつぶされた。

あと数秒、遅ければ……ハンジが足止めをしていなければ……俺達はまとめてここで、仲良くあの世行きだっただろう。

そして、それはエレンによる人類大虐殺を止められないのと同義だ。






飛行艇は海へと着水して、激しくプロペラが回る音とエンジンが震える音がした。






「離陸する!!掴まれ!!」






操縦席に座るオニャンコポンとナナは、共に涙を拭う暇もないまま操縦桿を握っていた。

ガキ共は窓に張りついてハンジの最期を見届けている。




俺はそれを、しなかった。




――――いや、できなかった。

代わりに出てきた言葉は……そういや一度も、あいつに言ったことのない言葉だ。




――――それくらい、当たり前に側にいたんだな、お前は。











「……じゃあな。ハンジ。………見ててくれ。」










この世界の結末を。






お前達が捧げた心臓の――――行く末を。






/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp