第234章 花弁②
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――――いつからだ、あいつが側にいることが当たり前になったのは。
自分のことに無頓着で、放っておけば日がな一日巨人の話をしてやがる。風呂も入らず、飯も食わず、そんなことも珍しくなかった。
地下街から調査兵団にいきなり入団するという異例の経歴の俺達三人にいつもいつも何かと話しかけてきていて……最初は、エルヴィンの命令で監視をしてやがるんだろうと思っていた。
――――だがどうやらこいつにとって俺達……特に俺はただただ興味の対象なのだろうと理解するのに時間はかからなかった。誰に対しても分け隔てなく、能天気であっけらかんと生きているようで……あいつも本当は色んなしがらみに憑りつかれていた。
――――ハンジが雷槍を早々に二本、巨人に打ち込んだ。
あとはもう接近戦だ。
そうなると……高温を発する超大型の皮膚を直接切り付けるのは容易じゃない。身体を、その蒸気で焼かれることになる。
そして高温の蒸気を浴び続けることで起こるのは……兵服の発火だ。
何体も何体も、執念のようにハンジが巨人のうなじを削ぎまくる様子を遠目にただ、見ていた。
ナナは俺の横で小さく震えながら、でも一時も目を逸らさずに、その大きな目から涙をぼろぼろ零しながらハンジの姿を見つめていた。
オニャンコポンがナナを呼んで、いよいよ本当に地鳴らしが迫って来て……飛行艇の燃料タンクの穴も塞げたと声があがり、燃料注入を開始したようだ。
俺達も最期まで見届けている場合じゃなく飛行艇に乗り込んだ。