第234章 花弁②
「―――……ハンジさんを、特別な感情で、好きです。――――ずっと……っ、いつまでも……っ……。」
「――――ナナ……。」
どん、と自分の胸に拳を打ち付け、背筋を伸ばして敬礼をする。
ごめんなさい。
とても……笑えそうにはない。
どうしても溢れ続ける涙を止める術は私にはなくて。
でも、ハンジさんの覚悟を、生き方を、否定しない。
いつもあなたが私を受け入れ肯定し続けてくれたように。
あなたの決断は決して間違っていないと、その采配を信じて私たちは進む。
「……っ御武運、を!!」
「――――……。」
ハンジさんが少しだけ嬉しそうに、目を細めた。
その時、リヴァイ兵士長の拳が力強く、ハンジさんの胸を打った。
どん、というその音は……『頼んだ』と、言っているようだった。
「――――心臓を捧げよ。」
その鼓舞はこの上なくシンプルで、愛情に満ちていて……ハンジさんもそれを理解して、一瞬……ほんの一瞬泣きそうな、顔をした。
そしてその口角はすぐにニッと引き上げられた。
「ハハッ!君が言ってんの初めて聞いたよ。」
そう言って、ハンジさんはアンカーを放った。
「――――あぁそれと……私もね、ナナ。あなたが好きだよ。私の大事な人の側にいてくれて、ありがとう。ナナ。」
ハンジさんのその言葉は柔らかい風のように優しくて、ふわりとブラウンの髪がなびいた。その笑顔がとても綺麗で……失いたくなくて、ハンジさんが地を蹴って飛び立つその音に私は思わず反射的に体が動いた。
行かせたくない、そう、諦められなかったんだ。
そんな私の腕を凄い力で、リヴァイ兵士長は掴んで引き留めた。
「……っ……!!」
「――――止めるな。あいつの覚悟だ。」
「…………リヴァイ、さん………。」