第234章 花弁②
皆が外へ飛び出して行った。
目の前に迫り来る無数の巨人に呆然としている。
そんな中、ハンジさんは一人……俯いたまま黙々と雷槍を装備し始めた。私は何をしているのか一瞬理解できず、息を引き取ったフロックさんの側で座り込んだまま……ハンジさんが腕に雷槍をガチャ、と装着したその音で我に返った。
「ハンジさん?!何を……っ……」
私の言葉にハンジさんは僅かに振り向いて、ほんの少し口角を上げてまた、深緑のマントを翻して外へと向かった。
「――――まさ、か……ハンジさん……、いや、やだ……っ!」
一心不乱に立ち上がって後を追う。
視界がぼやけて足元がふらつく。でも、そんなことより何よりも……行かせちゃいけない。止めないと。
だってハンジさんは――――死ぬ気だ。
おぼつかない足取りで格納庫の外まで追いついた。けれどハンジさんの腕を掴めるほど近くには、近寄れなかった。
――――彼女の覚悟と、その気迫に……足がすくんだんだ。
ハンジさんの目線の先では、飛行艇が飛び立つまでの地鳴らしの足止めを誰が残ってするのか、をアルミンやライナーが言い合っていた。
「僕が残って……足止めを……。」
「お前はダメだ!!エレンを止める切り札はお前しかいない!!ここは俺が!!」
その二人の言葉をハンジさんは強く掻き消した。
「ダメに決まってるだろ!!巨人の力はもう一切消耗させるわけにはいかない!!」
「ハンジさん!!」
「皆をここまで率いてきたのは私だ。大勢の仲間を殺してまで進んだ。そのけじめをつける。」
――――それはつまり、ここに残って――――……死ぬその瞬間まで、巨人と戦うということだ。
「アルミン・アルレルト。君を15代調査兵団団長に任命する。」
ハンジさんの言葉に、誰もが呆然としていた。