第234章 花弁②
「私たちは……島のみんなを守ることも、諦めない、です……!」
「俺……達の……悪魔……。それ……だけ……希望……。」
「――――あなたの守りたかったものも、決して……諦め、ない……っ……。ごめん……なさい、フロックさん……っ……。」
フロックさんの顔を覗き込んだその瞬間、目の奥の瞳孔がゆっくりと開いて――――……まるで闇の深淵から、そこに棲む何かがこちらを覗いているようだった。
「――――死んだ……。」
ハンジさんもまたそれを見届けて、ぽつりと呟いた。
その言葉がよりフロックさんがもう二度と帰って来ることはないんだと強く認識させて、私はまた、言葉に詰まった。
ハンジさんはただ静かに、フロックさんの最期の言葉に耳を傾けて反芻した後、彼の言葉を肯定した。
「確かに君の言う通りだよ。フロック……。でも……あきらめきれないんだ。」
ハンジさんの指が、優しくフロックさんの目を閉じさせた。
「今日はダメでも……いつの日か……って……。」
ハンジさんは小さく呟いた。
まだ彼女の中では終わっていない。
そのいつか訪れるであろうその日を、諦めていない。
その諦めない姿勢がいつもいつも大好きだった。
憧れていた。
――――でもこの直後に、私はハンジさんのその諦めない姿勢による決断に、胸が張り裂けそうになる。